工法


日本の木造造船界は現在 FRPや輸入艇、中古艇至上により風前の灯火になっています。そんな中でも世界に通用する伝統的な技術を伝承する数少ない造船所が残っているのは土俵際で心強く感じる思いでもあります。しかし世界の木造造船界は伝統の上に技術の進化を重ねて新たな船を建造しているところもあります。

未来のために”人と地球に優しい資源循環する素材を利用する”というコンセプトを中心に置いた WOOD FRIENDER 24 ですが”最新のデザインによるハイパフォーマンスと安全強度を有する”というもう一つの重要なコンセプトを実現するためには従来の木造造船方法では行き詰るだろうと考えていました。

最新のデザインに対応した造船方法が必要になったわけです。


DSC_0093 (2).jpg
・蒸し曲げ中の材木。

DSC_0410 (3).JPG
・真空ポンプ圧力ゲージ。

品質管理


従来の木造造船では熟練職人の優れた”勘”に頼って建造されるというものでした。熟練職人の”勘”というものは伝統的なモノづくりに対しては非常に優れた能力を発揮しますが 全く未知な最新鋭のハイパフォーマンスを持つ WOOD FRIENDER 24 のような艇の建造開発には熟練期間等を考慮すると実現不可能だろうと思われました。正確に計算されて設計された船体を未熟の”勘”で組み立てていくのは その地点で職人による再設計がされたに等しい危険性を含んできます。

”勘”に頼らず熟練職人の”勘”にも劣らない品質を保つのには”数値”をツールとして確認・管理できるシステムが必要になりました。


コールドモールド


近代の木造ハル(船体)の合理的な工法としてはコールドモールドという工法があります。船体と同サイズの雄型を作り、その上に短冊状に製材してた木材を交差角度を変えつつ重ねて接着させるという工法ですが誕生より既に30年以上経っています。日本ではこの工法が未だに最新工法ととらえられる傾向があります。材と材の圧着には杉針やビスなどで締め合わせて行きます。この方法だと厳密にいえば杉針(ビス)の圧着ポイントと未圧着ポイントというように接着にばらつきや隙間があり、その部分への水漏れがあった場合、水漏れ箇所が特定できない、などの欠点のある不完全な船体になる危険性があります。また、必ず雄型を必要とするのでWOOD FRIENDER24の特徴であるカスタマイズ性を実現しようとした場合は高コストになります。 また、杉針(ビス)等の処理にも非常なコストがかかります。仕上げ精度はFRPで例えるとハンドレイアップのようなものです。



coldmolding.jpg
・従来のコールドモールド(ビスどめ)。


・Vacuum-Bagging デモムービー。

Vacuum-Bagging(真空圧着工法)



欧米での現代木造造船ではコールドモールドの弱点を克服するためにVacuum-Bagging(真空圧着工法)が開発されポピュラーになりつつあります。この工法はトリプルプランキング同様の木材構成を杉針(ビス)でピンポイント圧着するのではなく布団圧縮パックのような意味合いを持つ特殊なバッグにより圧着させたい部分を広く包み込み、真空ポンプにより真空状態をつくり面で圧着させるという工法です。面で圧着し余分な接着剤は吸い取ってくれるので品質にバラツキがありません。真空圧と温度をゲージにより管理できるので軽くて強いという品質を作り出すことが可能です。品質精度はFRPで例えるとインフュージョンの様なものでハンドレイとは比べ物にならない高い品質になります。

しかし日本の造船界でこの工法を熟知しているところがなく、また文献で調べたものを実際に行うのは非常に困難を伴う作業であります。


CFRP


「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の整形技術が木製Vacuumu-Baggingに類似しているので応用可能ではないか?」というアドバイスをCFRPの専門技術を保持するニッポンチャレンジ出身の先端複合材などの研究開発を手掛ける企業よりいただきました。文献研究だけでは分からなかった作業の細部や最適な資材、接着剤メーカーの紹介から真空時におけるトラブルシューティングまで共に取り組んで頂きました。

欧米での木製Vacuumu-Bagging の品質を更に進化させた精度と、雄型を使わないで真空状態にできるという独自の技術により WOOD FRIENDER 24 は最新鋭の設計思想を反映させることができる、カスタマイズ可能な”軽くて硬い”木製モノコックボディを完成することができましました。


DSC_0104.JPG
.・作業準備中の進化したVacuumu-Bagging(WF24)

DSC_0469 (2).JPG
・フェレット加工(WF24)。

フェレット加工


Vacuumu-Baggingに比べて地味な工程ですが木製モノコックを形成するための重要な作業としてフェレット加工というものがあります。木造船体の構造材と外板を接続するにはビスと接着剤を併用する事が多く見受けられます。このビスがあなどれなくて その総重量は何十㎏にもなります。またビスは一見 強度があるように思えますが航行中の波浪などにより衝撃がビス一点にかかり破断する場合があります。ビスでの強度を見込んでいる場合その部分は極端な強度不足に陥ってしまします。

この危険性を回避するためにWOOD FRIENDER 24はビスではない特殊な接続法と接着剤により外板を接着しています。更に すべての接着部に対してフェレット加工を施しています。これは強化溶接のようなもので接着強度を飛躍的に伸ばす加工です。接着剤メーカーと綿密な協議の上で最適な接着剤と添加剤を採用しています。ビスを一本も使用せずに高強度を実現する事が可能となり船体全重量の大幅な減量にも成功しています。

次世代


新しいVacuumu-Baggingによって誕生した次世代の木製モノコックは、木材が本来持つ生物としての微細で複雑な構造を持ちつつ、多方向に完璧に真空積層する事ができており、カーボンやFRPの複合材料でも作ることが困難な生きた船体 ”バイオモノコック” として生まれ変わりました。

そのバイオShell(殻)と、アメリカスカップ艇から正当進化の血統で科学された船体構造(船体コアを守る頑強なオーク製コアブロックを中心にして全身にに血管のような構造マホガニーが張り巡らされています。)により、”超軽量かつ超硬質”でありながら生物独特の”しなやかさ”を持つ次世代の木製モノコックを実現する事が出来ました。

レーシング用のハードなリグセッティングにも硬く受け答え、激しい波もしなやかに受け流す。結露なく、温かい、”日本”独特の優しいデザインを機能として表現しています。

テスト段階セッティングの実際のレースでWF24は24ftという小型艇でありながら、ワンクラス以上(30f~40f)のレーサークルザーに打ち勝った実績を持っています。(※2014年2月6日現在)


DSC_0471 (2).JPG
・有機的な”バイオモノコック”建造中の船内。(WF24)

写真 (2).JPG
・造波抵抗を極限まで抑えるシャープなフォロー(凹み)を持つWF24の木製モノコック。

木製モノコック


スタジオジブリの宮崎駿監督「紅の豚」にサボイアS21試作戦闘艇に対しての「木製モノコックのラインほど美しいものはない…」という一節があり 非常に魅力を感じていましたがWOOD FRIENDER 24 で実現させた”木製モノコック”は予想を遥かに超える”感触”をもたらしてくれました。最新の設計思想と技術で生み出した現代の”木製モノコック”は従来の歴史的モノコックのようにビスなどを一本も使用せずに施工されているためにピンポイントのキシミがなく、超軽量かつ剛性のある完全に一体化された”バイオモノコック” として生まれ変わりました。

実際のセーリング(帆走)での感触はメロディックで優しく、しかも風を確実にスピードに変えてゆく硬さを持っていて、 テストセーリングに参加してくれたベテランセーラー達も全く経験のしたことのない感覚に笑顔がこぼれ、ヨット少年少女に引き戻されてアドレナリンが沸騰-風と波に精神が深く共鳴していく-という不思議な”感触”に魅せられている様子が印象的でした。 セーリングと木製モノコックの組み合わせは想像できない何か新しい豊かさをもたらすのかもしれません。

テストセーリングに同乗したデザイナーの金井氏は最後にこのようなコメントを残しました。「予想以上の好感触だね。乗って感じたのは木製モノコックのハル(船体)は素材感としてFRP(強化プラスチック)のかなり上でカーボン(炭素繊維強化プラスチック)のすぐ下に位置するかも知れないね… もちろん乗り心地は一番だよね。」

デザインについて詳しく知る>>

カスタマイズについて詳しく知る>>